家族信託とは何か

家族信託とは何か

分かれ道で成年後見、家族信託 あなたはどちらの道に進みますか?

超高齢社会に突入した日本では、人生後半になって重大な分かれ道が出現します。大仰ないい方をお許しください。「認知症」の問題です。
認知症になり意思・判断能力を失うと、契約行為ができません。預貯金を下ろせないのはもちろん、大半の目論見が” 凍結”となります。
それを避けるには成年後見人を立てるか、前もって家族信託の契約をしておくかしかありません。認知症が深刻化すれば信託は行えません。
共に「財産管理」が主題ですが、成年後見は硬直的な運用で自由はききません。信託なら、本人の当初の意思に沿って柔軟に管理されます。
財産を守るのはもちろん、財産を活かし、さらには財産を遺し継承させる、これらをワンストップで行えるのは家族信託だけです。

「受益権」という大きな発明!

家族信託には3人の当事者が出てきます。委託者・受託者・受益者。わかりにくいのは「受益者」です。文字通り”財産から利益を得る人”なのですが、なぜそういう人を考える必要があるのか、そこがわかりにくいのです。
真ん中のイラストは所有権を「名義」と「受益権」に分けて描いています。民法では、所有するとは「名義」も、財産から得られる利益(受益権)も持っている状態を意味します。ところが「信託」では2つは独立した権利であり、名義と受益権を別々の人が持つことができると考えるわけです。
信託のスタート時、受託者は「名義」だけを受け取り、委託者は「受益権」をまだ離しません。だから委託者は「=受益者」。これが家族信託の原型で、(そしてここが最も重要ですが)信託では受益者を自由に変更できます。名義と内実が一体である所有権から「受益権」だけを切り離したのですから、受益権が旧所有者から離れても当然です。こうして「私の後は妻に、その次は長男に受益権を……」ができるようになりました。
受益権という観念は、所有と利益が一体でがんじがらめだった「所有権」を、柔軟な権利に変えた大発明です。

認知症対策なら断然、家族信託

民法で「所有権」とは、「名義」と「物を所有していることから得られる利益(受益権)」を併せ持つもの。物を支配する権利を「物権」といいますが、他から干渉を受けることのない絶対的な権利とされています。
では信託が発明した「受益権」とは何でしょう。誰に対して行使できる権利でしょうか。信託では「受託者に請求できる権利」だと考えられています。人に対する権利なので「債権」ということになります。
これに対し「名義」とはなんでしょう。内実は失ったものの所有者のようにふるまえるという意味で”物権のかけら”といえるかもしれません。
家族信託とは物権のかけらをもつ受託者が、債権者(受益者)の期待に応えようとする財産管理法であるといえます。委託者は物権を手放しているので、委託者の健康状態は受託者が財産管理を行う上でなんらの影響も与えません。ここが最近、家族信託が注目される理由です。
超高齢社会の日本では認知症により財産や事業が”凍結される”リスクは避けられません。しかし大切な財産を早めに信頼できる家族や友人に託せば、委託者の常況にかかわらず本人や家族の生活が守られるのです。

財産を守り・活かし・遺す手法

家族信託は財産管理手法ですが、優れものです!
財産の管理や処分を本人に代わり第三者に行わせたい場合、民法では「代理」の法理を使いますが、信託は「所有権そのもの」に着目して代行を可能にしました。
これにより家族信託では、「認知症対策」を完ぺきに行えるようになりました。成年後見のように制約を受けた代理ではなく、受託者の裁量のもとに委託者の意思を、委託者の健康状態や生死にかかわりなく、実現させていけるようになったのです(委託者の意思の固着化)。
委託者の意思が生きているうちから死後に至るまで貫き通されるという手法は他にはありません。遺言は遺言者の死後にしか効力をもちませんし、成年後見は本人が意思・判断能力を失った人にだけ適用され、被後見人の死によって終わってしまいます。
信託による「名義と受益権の分離」という発明によって、家族のための一貫した財産管理が行えるようになりました。信託契約は相当長きにわたって続きます。将来を見通したしっかりしたシナリオを創りが重要で、それがあれば財産を守る・活かす・承継する財産管理を何世代かにわたって実現することができます。

家族信託ならできる、こんなこと

◎認知症も怖くない型信託
▶認知症になった後も負担が重く硬直的な成年後見を使わずに財産管理する。
▶認知症の妻が相続すると財産は身動きできなくなる。そんな事態は防ぐ。
▶高齢の親が判断力低下後も株や投資信託をしているのでブレーキをかける。
▶認知症になった後も子や孫への教育資金、結婚資金の贈与を続ける。
▶大きなプロジェクトなので、私の認知症による契約凍結を回避する。
▶認知症や行方不明の推定相続人がいても遺産分割できるようにしておく。

◎次の次に承継する信託
▶先祖代々受け継いできた家と敷地を、家系を引き継ぐ者に渡し続ける。
▶私の家は現在の妻に遺すが、妻の亡き後は先妻との子に渡す<イラスト上>。
▶再婚したい人がいるが、入籍すると私の財産の半分が相手の親族に渡ることになりかねず子らが反対している。信託で不安を解消させる。

◎「私の亡き後」を解決する信託
▶私が死んだ後も知的障がいのある娘の安定した生活と福祉を確保する。
▶私が死んだ後も重い身体障がいがある息子の生活を守る。
▶引きこもり子に、私の死後も定期的に生活費を給付する<イラスト中>。

◎収益不動産管理型信託
▶収益マンションを多数持っているので子に権限を委譲して隠居したいが、今後の修理や建替えには一定の発言権を残しておく。
▶収益不動産の所有権と受益権を分離し、複数の相続人にほぼ均等に承継させる。

◎会社存続、希求型信託
▶自社株の100%株主である私が認知症になると経営がストップしてしまうのを防ぐ。 
▶自社株を後継者候補の長男に信託して配当を得るが<イラスト下>、重要な議決に際しては指図権を行使して影響力を残す。                    
▶私の個人不動産を会社が使っているので、相続発生後も会社がこれまで通り使えるようにしておく。
▶後継者を決めかねているので、私の死後に決定できる仕組みを作っておく。

◎その他の問題解決信託
▶遺言は縁起が悪いので書かないが、生前に財産分与割合を確定しておく。
▶“争族” が重なり「複雑な共有状態」になってしまった不動産を一元管理する。
▶親友に財産を託し、重病の私に代わり相続人の受益割合を決めてもらう。

認知症対策、スゴイのはどっちだ⁈

Aさんは最近物忘れすることが多く、認知症になるのではないかと心配しています。自分の死後は妻に全財産を遺し、妻が亡くなったら長男・次男が引き継いでくれればよいと考えています。
家族信託・成年後見・遺言を使うとどういうことができるでしょうか?
★まず「遺言」から。
遺言は、遺産をどう分けるかを指示できます。
「妻に全財産を相続させる」と書いたとしましょう。
2つ問題があります。
Aさんが認知症になってから遺言を書いたとすると、遺言者に意思能力が欠けているとされ、裁判で無効になる恐れがあります。
だから元気なうちに書いておくのが絶対の条件。
さらに、長男・次男に聞き分けがないとふたりから遺留分減殺請求される可能性があります。
遺言は、必ずしも遺言者の指示通りにはならないということです。
★次は「成年後見」。
この制度は、そもそも認知症にならないと適用されません。
Aさんの認知症がひどくなり後見開始となったとしましょう。
Aさんの財産すべてが成年後見人の管理下に置かれ、本人も家族も一切財産について口出しも、処分もできなくなります。
後見人には士業者が付くことが多く、当然報酬も発生します(年間数十万円)。
また後見人は本人の死後のことには関与しないので、Aさんの死後の財産の行方はあずかり知らないということになります。
Aさんに代わって相続対策等をすることも一切ありません。
財産を管理し、なるべく減らさないことが使命なのでAさんの金融資産は厳重に管理され、家族のためにはまったく使えなくなります。
★最後は「家族信託」。Aさんの希望はすべてかないます。
Aさんの財産を預かった受託者は名義を受託者の名に換え(あくまで信託として預かっているのであり受託者の所有物になるわけではありません)、委託者が契約書に書いた「信託の目的」を実現するよう財産を管理し処分します。
Aさんが死亡すると受益者は妻に代わり、妻が亡くなると信託は終了し、残った信託財産は兄弟に帰属することになります。
契約書に以上の推移を書いておけば、遺言ではできなかった「次の次の人」への財産承継も可能になるのです。
■図表で分かる「認知症」の本人に代わってできること
認知症対策として「成年後見制度」が唯一の救済策のように喧伝されていますが、「公的な代理人」である成年後見人でも、実際にできることは限られています<右の図表>。
むしろ「家族信託」を家族が使えば、後見人ができなかったことまで「何とかする」ことができる可能性が高くなります。
ただし家族信託の契約は委任者の意思・判断能力がしっかりしているときに結んでおかなければなりません。

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